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【よくクライアントさんから聞かれる質問:なぜ臨床心理士になったのか】

大学に在学している頃まで私は「いい学校に出ていい会社に入るのが一番」という親から与えられた価値観のレールに沿うように自分なりに日々過ごしていました。大学に期待していたのも、4年間という時間でした。4年間という時間さえあれば自分の進みたい道も見つけられるだろうと思っていました。しかし実際には4年では見つからず留年も含めて5年間の歳月を費やして卒業に至ったのでした。就職活動もOB訪問を含め周囲に合わせて必死に動いていました。言葉を通じたコミュニケーションに強い関心がありマスコミ関連、主に広告会社を中心に就職先を探していました。しかし、その途中から身体に異変が生じ始めました。ある時から原因不明の鼻血が昼夜問わず連日続いたのです。今振り返ってみると、自分の中で相当無理をしていたのだと思います。身体が​そっちには向かうことができないと信号を発していたのでしょう。心とからだがつながっていることを象徴する出来事だったと感じます。

そんな時、大学の図書館で偶然一冊の本に出会いました。『ミルトン・エリクソン入門』という本でした。

ミルトン・エリクソンは20世紀最大の心理療法家と言われており、特に現代催眠の父と呼ばれている精神科医(医学博士・心理学修士)でした。その本には、エリクソンと様々な患者さんとのユニークなやりとりが紹介されていました。エリクソン博士(1985年に亡くなっています)は、患者への尊敬と無意識の交流というとても高度なコミュニケーションに重きを置いて人々と関わることで、大きな望ましい変化をもたらしたことで知られており、今でも世界中の治療家や患者さんたちから尊敬をされ続けている方です。その本を通じて、「人がコミュニケーションで傷つけ合ってしまうことは実体験も含めて見聞きしてきたけれど、コミュニケーションによって人が、その人らしく望ましい方向に変化していくということがこんなにも起きてしまうということがあるものなのか!」と大きな衝撃を私は受けたのでした。

それがきっかけとなって、大学の心理学の教授(「ブリーフセラピー(短期療法)」がご専門の先生。ブリーフセラピーの源流はミルトン・エリクソン博士になります)のもとに駆け込んで、大学院に入って臨床心理士を目指すことを決めたのでした。コミュニケーションを通じて人がその人らしい方向へ進んでいく機会を提供する、そんなことに関われる仕事を自分はしていきたいと。

「自分は会社に就職というレールから外れてしまうことになる。でも、社会から外れることをするわけではない。まわり道になるかもしれないけれどいずれ社会につながって、役に立つ存在になろう」と心に誓い、迷いを断ち切りました。

不思議なことに、将来を保証されたわけでもない茨の道を選んだにも関わらず、そこから先は目の前に必要な人や情報が自然に現れるようになりました。例えば、友人から専門的な知識とコミュニケーション技術を要する電話対応の仕事を紹介してもらったり、仕事後に通うようになったスポーツクラブでハタ・ヨーガの先生と出会い、ヨーガの本質は、身体を柔らかくすることではなく、自分の心を深く見つめることにあるということを瞑想を含め丁寧に教わる機会を得るなど、コミュニケーションや心身相関を学ぶ土壌がどんどん用意されていきました。

大学院は3校受験しましたが、最後に唯一合格した際に面接の試験官として目の前に現れたのが、ミルトン・エリクソンを源流とする解決志向ブリーフセラピーを実践されておられる黒沢幸子先生だったのでした。そして間もなくして黒沢先生と共に活動しておられた故森俊夫先生に出会うことになりました。森俊夫先生こそがまさに私の運命を変えた本『ミルトン・エリクソン入門』の本を訳された先生だったのです!森先生からはエリクソニアン・アプローチを学ぶことができました(幸運なことに修士論文のご指導までしていただきました)。そして黒沢先生の研究室では、ブリーフセラピーのみならず、コミュニティ・アプローチ(開かれた心理学モデル)の基本も学ぶことができ、個別のカウンセリングにとどまらず、コンサルテーションやシステムの構築という枠組みを活用できる種まきをしていただきました。これが後に大学病院というコミュニティで仕事をすることになった時に、1人職場から8人体制のチームとなる臨床心理部創設という組織づくりに展開させていくのに大きな推進力となりました。


「必要な人に必要な時に必要な心理支援を」という理念を実現したい、しかし心理職はなかなか経営面で貢献できない立場にいることによる後ろめたさがあったため、経営企画室の室長に相談をした際に、「確かに利益は大切だよ。でも君たちの仕事はそれだけではないよね。医療に貢献できる心理士のモデルをこの病院から発信できるようなオリジナリティを追求してほしい」という励ましの言葉をもらいました。まさに魚心に水心、水を得た魚のごとく組織作りに邁進することができました。現実を見据えつつも、志や理念は大切であるし、大きな力や協力を得ることができるということを学びました。目指したい方向性が明確にあるとき、必要な人との出会いが生じる。いつしかそんな確信が深まるようになりました。

明確な方向性や志を伴うコミュニケーションを通じて個人の変容が起きることに加えて、周囲の人間関係に好ましい変化が生じ、また望ましいコミュニティも形成されていく。臨床心理学やコミュニティ心理学という枠組みは、個人や社会に変化をもたらす価値を提供することができる。そんな可能性を日々実感するようになりました。

臨床心理士になろうと思った動機は今でも活動の原動力となっており、

これからも個人や集団・組織、社会やコミュニティに貢献できる臨床心理士で在り続けたいという思いにもつながっています。



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